人手不足への対応や業務効率化を目的にAI・DXへ関心を持っても、「社内に詳しい人がいない」「何を学ばせればよいか分からない」という中小企業は少なくありません。厚生労働省は2026年、中小企業向けリスキリング支援事業で相談窓口やAI・DX人材育成に関する情報提供を行っています。
大切なのは、いきなり全社員を専門家にすることではなく、業務課題に合わせて必要な人材と学習内容を段階的に設計することです。
まず「DX人材を育てる」から始めない
最初に確認したいのは経営・業務上の課題です。たとえば、問い合わせ対応に時間がかかる、見積書作成が属人化している、顧客データを活用できていない、といった具体的な課題を挙げます。
そのうえで、デジタル化で解決できる部分を選びます。ツール導入そのものを目標にすると、研修を受けても実務で使われない状態になりやすいためです。
3段階で人材を育てる
段階1:全社員の基礎リテラシー
生成AIやデータの基本、情報セキュリティ、個人情報、社内ルールなど、業務利用に必要な共通知識を整えます。IPAのDXリテラシー標準は、全ビジネスパーソンが身につけるべきスキルを整理する際の参考になります。
段階2:現場の活用担当者
各部署で実際の業務改善を試す人を決めます。たとえば営業なら議事録や提案準備、管理部門なら文書整理など、小さく検証できる業務から始めます。
段階3:推進役・専門人材
複数部署にまたがる仕組みづくり、データ管理、AIの安全な運用などを担う人材を育てます。すべてを内製する必要はなく、専門領域は外部支援を使いながら、社内に判断できる人を置く方法もあります。
研修を実務につなげる4つのポイント
1つ目は、研修前に対象業務を決めること。2つ目は、学習後すぐに小さな実践機会を設けること。3つ目は、成果を「受講人数」だけでなく、時間削減や品質改善などで確認すること。4つ目は、成功例と失敗例を社内で共有することです。
公的支援も確認する
厚生労働省の中小企業リスキリング支援事業では、人材育成に関する無料相談窓口が案内されています。また、人材開発支援助成金には、企業が労働者へ職業訓練を実施する際の経費や訓練期間中の賃金の一部などを支援する仕組みがあります。
制度は対象要件や申請手続きが変わるため、利用時点の厚生労働省公式情報を確認してください。
まとめ
中小企業のAI・DX人材育成は、「専門家を採用できないから進められない」と考える必要はありません。業務課題を明確にし、全社員の基礎、現場の活用担当者、推進役の順で役割を分けることで、小さく始められます。