人事・採用担当の経験をWebマーケティングに活かす方法：ペルソナ設定のプロになる

2025.07.22

会社の「人」に関するプロフェッショナルとして、日々、多くの候補者と向き合い、その人の人生と、組織の未来を繋ぐ仕事をしてきた、人事・採用担当のあなたへ。

大きな責任とやりがいを感じる一方で、
「もっと事業の成長にダイレクトに関わる仕事がしてみたい」
「自分のコミュニケーション能力や分析力が、他の分野でどう活かせるか試したい」
「定型的な業務から一歩踏み出し、新しいスキルアップでキャリアを再構築したい」
そんな想いを抱いたことはありませんか？

そして、Webマーケティングに可能性を感じつつも、「自分は畑違いだ」「クリエイティブな仕事は縁遠い」と、挑戦をためらってはいないでしょうか。

もし、そう思っているなら、ぜひこの先を読み進めてください。なぜなら、あなたは無意識のうちに、現代のWebマーケティングで最も重要と言われる、あるスキルを、誰よりも深く実践してきた「プロフェッショナル」だからです。

そのスキルとは、「ペルソナ設定」──ターゲットとなる人物像を深く理解し、定義する能力です。この記事では、あなたのその類まれなる才能を、Webマーケティングの世界でいかにして開花させ、輝かしいキャリアアップに繋げるかを徹底解説します。

1. 「採用」とは、会社を売り込むマーケティング活動である

まず、あなたが行ってきた「採用」という仕事の本質を、マーケティングの視点から再定義してみましょう。驚くかもしれませんが、あなたの仕事は、Webマーケティングの活動とほぼ完全に一致するのです。

候補者は「顧客」、求人票は「広告」、会社は「商品」

採用活動とマーケティング活動は、対象が「人材」か「商品・サービス」かが違うだけで、その構造とプロセスは全く同じです。「採用マーケティング」という言葉が存在するように、現代の採用は、もはやマーケティングそのものなのです。

あなたの採用活動（これまで）	Webマーケティング活動（これから）
求める人物像の定義	ペルソナ設定
求人媒体への出稿	広告チャネルの選定・出稿
候補者の心に響く求人票の作成	キャッチコピーライティング、LP制作
候補者との面接・キャリア相談	顧客ヒアリング、ユーザーインタビュー
候補者の本音やインサイトの分析	定性データ分析、インサイトの抽出
内定者フォロー、入社後の関係構築	CRM、ファンマーケティング
採用ブランディング（EVPの策定）	企業ブランディング（UVPの策定）
候補者体験（CX）の向上	顧客体験（CX）の向上

このように、あなたは既に、「誰に（ペルソナ）」「何を（価値提案）」「どのように伝え（コミュニケーション）」「どう関係を築くか（CRM）」という、マーケティングの根幹をなす一連のプロセスを、日々、実践してきたのです。

この事実に気づくことが、あなたのリスキリングと転職を成功させるための、最も重要な第一歩となります。

2. あなたは既に「ペルソナ設定」のプロ。その圧倒的な3つの強み

Webマーケティングの成否は、「ペルソナ設定」の精度で8割決まると言っても過言ではありません。そして、この領域において、人事・採用担当者であるあなたには、他の職種出身者にはない、圧倒的な強みがあります。

強み1：机上の空論ではない、無数の「人物データ」

多くのマーケターは、市場調査データやアンケート結果といった「定量データ」からペルソナを構築します。しかし、あなたが持つのは、それらとは比較にならないほどリッチで、生々しい「定性データ」です。

何百、何千という職務経歴書から読み取れる、キャリアの変遷とスキルの実態。
面接での対話から見えてくる、その人の価値観、仕事への情熱、そして隠された不安。
退職者との面談で明らかになる、組織に対するリアルな本音。

あなたは、人がどんな時に転職を決意し、どんな言葉に心が動き、どんな未来を望んでいるのか、その膨大なケーススタディを頭の中に蓄積しています。データ上の「30代男性」ではなく、「家族のために安定を求めつつも、技術者としての探究心も捨てきれない35歳のエンジニア」というような、血の通った、解像度の高い人物像を描く能力は、あなたの専売特許です。

強み2：「聞く力」と「本音を引き出す質問力」

優れた面接官は、一方的に質問を浴びせるのではなく、候補者がリラックスして本音を話せるような場を作り出し、巧みな質問でその人の本質を引き出します。

「なぜ、そう思うのですか？」と深掘りする傾聴力。
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを使い分ける質問の技術。
候補者の言葉の裏にある、潜在的なニーズや欲求を察知する洞察力。

これらの高度なヒアリングスキルは、Webマーケティングにおける「ユーザーインタビュー」や「顧客インサイトの抽出」といった、ペルソナ設定の根幹をなすプロセスで、絶大な力を発揮します。多くのマーケターが苦労する「顧客の本当の声を聞く」という作業を、あなたは既にプロとして実践してきたのです。

強み3：「組織」と「個人」の最適なマッチングを見抜く力

あなたの仕事は、単に優秀な人材を見つけることではありません。その人材が、自社の文化やビジョンにフィットし、入社後に活躍してくれるかどうかという、「マッチング」の精度を見抜くことが求められます。

これは、「自社の強み（提供価値）」と「顧客のニーズ」を正確に結びつけるという、マーケティングの核心そのものです。自社のことを客観的に理解し、その上で、ターゲットとなる人物像を定め、最適なコミュニケーションを設計する。この両面からの視点は、独りよがりではない、成果に繋がるマーケティング戦略を立案する上で不可欠な能力です。

3. 人事・採用経験を活かせるWebマーケティングのキャリアパスと、具体的なリスキリング戦略

あなたのそのユニークな強みは、Webマーケティングの世界でどのようなキャリアアップに繋がるのでしょうか。親和性の高い3つのキャリアパスと、そのために必要なスキルアップ戦略をご紹介します。

キャリアパス①：コンテンツマーケター／BtoBマーケター

ペルソナの課題を解決する「価値ある情報」を届けるプロフェッショナル

なぜフィットするのか？
コンテンツマーケティングの成功は、いかに読者（ペルソナ）の悩みに深く寄り添い、その解決策となるコンテンツを提供できるかにかかっています。あなたの「ペルソナ設定能力」と「課題発見能力」は、まさにこの仕事のためにあると言っても過言ではありません。特に、企業の担当者という「人」の課題を解決するBtoBマーケティングでは、その力が最大限に発揮されます。

キャリアパス②：CRMマーケター／コミュニティマネージャー

顧客と長期的な信頼関係を築き、「ファン」を育てるプロフェッショナル

なぜフィットするのか？
CRM（顧客関係管理）やコミュニティ運営は、一度きりの取引で終わらせず、顧客と継続的なコミュニケーションを取ることで、LTV（顧客生涯価値）を高める仕事です。内定者フォローや社員とのリレーション構築で培ったあなたの「関係構築力」は、顧客を熱心なファンへと育てていく上で、大きな武器となります。

キャリアパス③：採用マーケター／エンプロイヤーブランディング担当

人事の知見とマーケティングスキルを掛け合わせた、希少価値の高い専門家

なぜフィットするのか？
これは、あなたの経験を最もダイレクトに活かせるキャリアアップです。人事・採用のプロフェッショナルが、Webマーケティングのスキルを身につけることで、「採用マーケティング」や、企業の魅力を高める「エンプロイヤーブランディング」の領域で、他の誰にも真似できない専門家となることができます。市場価値が非常に高く、多くの企業から求められる存在になるでしょう。

人事経験者が「追加」で学ぶべき3つのデジタルスキル

あなたの強みをデジタルの世界で発揮するために、以下の3つのスキルを「追加」で学びましょう。

SEOの基礎知識
人々が（仕事や商品を）探すときに、どのような言葉で検索し、どのような情報を求めているのか。その行動を理解するための、Webマーケティングの基礎体力です。
コンテンツライティングの技術
あなたの深い人物理解を、人の心を動かす「言葉」へと変換する技術です。Web上で読まれる文章の型や、説得力のあるストーリーの作り方を学びましょう。
データ分析の基本
あなたの「定性的な人物理解」に、Googleアナリティクスなどで得られる「定量的なデータ」という客観的な根拠を加えることで、あなたの仮説はより強固なものになります。

4. 職務経歴書で「人事」を「マーケター」の言葉で語り直す自己PR術【例文付き】

最後の関門は、あなたの価値を転職市場で正しく伝えるための「職務経歴書」です。人事の経験を、マーケターの言葉で語り直す技術を身につけましょう。

職務要約で「人材獲得」を「顧客獲得」の視点から描く

株式会社〇〇の人事部にて8年間、新卒・中途採用を担当。年間50名の採用目標に対し、求める人物像（ペルソナ）を深く定義し、各採用媒体の特性に合わせた情報発信を行うことで、応募者数を前年比150%に向上させました。この【ターゲットペルソナを設定し、最適なチャネルでアプローチする採用マーケティングの経験】を、より広く事業会社のマーケティングで活かしたいと考え、〇〇スクールにてSEOやコンテンツマーケティングを学びました。貴社製品のターゲット顧客を深く理解し、エンゲージメントを高めるコンテンツ戦略で貢献できると確信しております。

自己PRで、あなたの「ペルソナ設定能力」を具体的に証明する

私の最大の強みは、数多くの面接とキャリア相談を通じて培った「解像度の高いペルソナ設定能力」です。単にスキルセットを定義するだけでなく、候補者がキャリアにおいて何を重視し、どんな言葉に心が動き、どのような未来を望んでいるのか、そのインサイトを深く引き出すことを得意としております。
例えば、エンジニア採用においては、単に技術力をアピールするのではなく、「裁量権」や「技術的挑戦」を求める層にはAというメッセージを、「安定性」や「ワークライフバランス」を求める層にはBというメッセージを、と訴求内容を使い分けることで、採用のミスマッチを大幅に削減いたしました。この能力は、Webマーケティングにおけるターゲットセグメンテーションや、各セグメントに最適化されたコミュニケーションプランの策定において、必ずや貴社の事業に貢献できるものと考えております。